第47話

「三木、広子様ですね?」



男は確信の元、私に微笑む。



「・・・あんた誰?」



私の低い声に、男は笑みを深めた。



「失礼いたしました。わたくしは、新城秋の主席秘書をしております、三井壮士と申します。弓様の元へお送り致します。」



そう言った彼は名刺を差し出す。


「・・・で?」



名刺を確認した私は、強く三井を睨みつける。



「弓は、無事なんでしょうね?」



私の問いに、男はクスリと笑う。




「勿論、無事ですよ?しかも、これからの弓様の人生は秋様がお守りする予定ですので。」



「・・・意味が分からないんですけど。」



私の言葉に、三井は笑顔を崩さない。



笑みを崩さない三井に怒りがこみ上げる。



「・・・あんた、ニヤニヤ笑ってんじゃないよっ!!」



声を荒げた私に、三井が目を見開く。



「おや、さすが弓様の親友だ。

゛あの゛秋様に一生を委ねる弓様の器の大きさ。わたくしは大いに感銘を受けました。」



ウンウンと頷く三井に、苛立ちが増した。



「・・・それで?弓は無事なんですね?」



「はい、勿論です。ここではなんですので、車へ。」



そう言った三井は視線を周りに滑らせた。



視線の先には『観衆』



不躾な興味の視線に顔をしかめ、誘われるまま、車へ向かう。



すると、割れる、『観衆』



「あんたらが新城秋の側近というのは間違いなさそうね。」



私が呟くと、三井は無表情な彼に視線を向ける。

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