第44話

「いきなり呼び出されて殴ってきたの!」



そう言ったみぃちゃんの迫力と、弓さんへの誤解から、気が付くと頷いていた。



同時に、たるくんが弓さんより私を信じてくれたことがスゴく嬉しかった。



・・・だけど。



去っていく彼女の背中、その背中を見るたるくんの表情を見て、直ぐに後悔が押し寄せた。



そして、やってきた週末。



買い物帰りのお母さんから衝撃の言葉を聞いた。




「市ノ瀬牛乳店が昨日の夜全焼したらしいわ?夫婦焼死ですって。娘さんは行方不明だそうよ?

やだわ、何か事件かしら。

あそこの牛乳、美味しいのに残念だわ?」



「っっ、弓、さんが?」



私の言葉に、お母さんが目を見開く。



「あら、娘さんと知り合い?

あそこのお父さん、気さくでいい方だったのに。早く原因が分かればいいのにねぇ?」



「っっ、」



私は急いで携帯画面に指を滑らせた。



たるくんに電話をかける。



直ぐに切断される電話が、たるくんが休みなく彼女に電話をかけていることを物語っていた。



そして、たるくんにも会えなくて憂鬱な気分のまま週末が明けた。



迎えに来たたるくんは、寝不足に目を腫らしていて。



「・・・弓が、いなくなったんだ。」



そう言ったたるくんの声は、悲痛に揺れていた。



「・・・大丈夫だよ。警察が、見つけてくれるよ?」



私の口から出たのは、そんなありがちな文句で。



儚げに微笑んだたるくんの顔が頭から離れなかった。



そして、学校に着くと、いつも下駄箱に立っているみぃちゃんたちがいないことに、違和感を覚えた。



「あれ?美代たちがいないな?」



そう言ってくるたるくんと一緒に靴を履いていると、目に入った掲示板。



「あれ?緊急学校朝会?直接体育館に行けってさ。」



そう言ったたるくんに頷くと、体育館へ向かった。



そして、私とたるくんが体育館に足を踏み入れると、突き刺さった視線。



「なっ、なに?」



みんなの顔からは、軽蔑。



たるくんも、戸惑いに瞳を揺らしていた。



「と、とにかく、並ぼうか?」



たるくんと私は組が違う。



ギリギリまで私の傍にいて欲しかったけど、ギコチナく頷いた。

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