第41話

姫香が教室に戻れば、突き刺さる視線。



「っっ、」



今まで親しくしていたクラスメイトたちは、彼女を遠巻きに見ているだけ。



ヒソヒソ話をしては、彼女をチラリと見るクラスメイトは、彼女に話しかけることをしない。



姫香は、クラスメイトたちにぎこちなく微笑んで見せるも、誰も目を合わせてはくれなかった。



姫香は、目に涙を溜めると、小さく息を吐き出す。



授業が始まるまで、そっと息を殺して座っていた。







授業が始まり、しばらくすると、教室のドアが突然開いた。



室内全員の目が゛彼女゛に向く。



彼女は、突き刺さる視線をものともせず、黒髪をたなびかせて自席へ歩みを進める。



「おい、三木?」



教師が呼び止めるも、彼女は自分の鞄を肩に掛けると、その綺麗な目を教師に向けた。



「先生?私早退します。」



「・・・はぁ?理由は?」



訝しげに問いかける教師に、彼女はチラリと姫香を見た。



何故自分に視線が向けられているのか分からない姫香は、動揺にその大きな瞳を揺らした。



そして、教室中の生徒が思い思いに囁きあう。



すぐに視線を戻した広子は、教師に真剣な顔を向けた。



「弓の、捜索願を、出しに。学年主任の許可は取ってありますので。」



そう言って、彼女は教室を出て行ってしまった。



そして教室中に広がる、動揺。

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