第40話

それに満足げに頷いて見せた広子は、悲しみに顔を歪めた。



「弓への贈り物は全て、あの女と選んだもの。しかも堂々とそれを暴露しちゃう徹底ぶり。

あの女も、選ぶのは自分の趣味なものばかりで。

弓が何色が好きかあんた知ってるの?」



段々涙声になる広子に、渉は困惑の表情で答えた。



「姫が、女の子はピンクか白って言うから・・・」



「っっ、」



ガチャン!!


それを聞いた広子は、傍にあったイスを勢いよく倒した。



「あの子はねぇ、紺色か黒が好きなのよ。あの子の普段身に着けてる小物を見れば一目瞭然だし。

それに何?あのやったもの。可愛らしすぎて弓には似合わないものばかり。

合うとすれば、外見がお姫様なあの女くらいかしら?」



鼻で笑った広子には、止めどなく涙が流れる。



「あの女の取り巻きに虐められてたのも、気付かなかったわけ?毎日のように痣ができてたのに?

それを2年よ!?2年!!!」



広子は悲痛に顔を歪めて叫ぶ。



教師たちも知らなかった事実に、ただ、驚くばかりで言葉も出なかった。



静寂が室内を包む。



そんな静けさを破ったのは、広子だった。



「先生。私今日は早退します。弓にはもう身寄りがない。だから私が捜索届けを出そうと思ってるんで。」



「っっ、俺もっ、」



部屋を出ようとした広子に続こうと渉が一歩歩み寄ると、広子はニッコリと微笑んだ。



「あなたは今頃教室で震えてる゛か弱い゛お姫様と末永く暮らしたらいいじゃない?」



彼女の満面の笑みに、渉の表情が凍り付く。



そんな彼をキツく睨むと、広子は吐き捨てた。



「もう、゛悪女゛に関わらないで。

゛王子゛には関係ないでしょ?人殺し。」



広子が盛大な音をたてて部屋を出て行ったあとの室内には、気まずげに目を合わせあう教師たちと、その場に崩れ落ちた渉。



「っっ、頼むからっ。死んだりしてないよね?弓。」



走りながらそう呟いた広子の言葉は、静まりかえった廊下に響いた。

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