第39話

side 客観視点




ガラッ、



「お前等っ、いきなり喧嘩なんかしだしてどういうつもりだ?」



学年主任の教師が今にも食ってかかりそうな広子と、広子と視線を合わそうとせず俯く渉に怒鳴った。



広子は取り押さえていた女教師から腕を振り払い、渉を睨んだまま口を開いた。



「先生?私と弓が親友なの、知ってますよね?」



「あ、ああ。」



いきなり話しかけられた学年主任は、戸惑いに瞳を揺らす。



広子は顔を上げようとしない渉に憎悪の目を向けると、この場にいる教師たちに視線を滑らせた。



「先生たち、この中で、このカスの彼女が誰か知ってる人はいますか?」



そう言った広子は渉を顎で指す。



広子は秀才で美少女だが、性格はかなり男っぽく、父がガテンの仕事をしているため、言葉遣いは、荒い。



そんな彼女の迫力に、先ほどまで広子を抑えていた担任の女教師がおずおずと口を開いた。



「・・・中島さんでしょ?生徒はみんなそう言ってたわ?」



それに頷いた他の教師たち。


渉はその言葉に驚きに目を見開いて顔を勢いよく上げた。



そんな渉を、広子は嘲笑する。



「ですよね?でも、実際は弓が彼女なんですよ?」



広子の言葉に、教師たちに動揺が広がった。



「先生たちが勘違いしてもしょうがないですって。登下校はあの女とだし、クリスマスなんかは3人で祝ってたみたいですから?

あ、あんたが弓にあげたアクセサリー、弓が着けてるとこみたことある?」



広子が渉に聞くと、顔を歪めた渉は首を横に振った。

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