悪女の去った町

第38話

side 渉





・・・なにも、言葉が出なかった。





週明け、いきなり体育館に集められた生徒たち。



きっと、弓のことだと思った。



彼女の家が火事になって、弓と連絡が取れなくなってまる2日。



心配で眠れなくて、電話をかけ続けた週末。



弓の携帯が電池切れして、1日。



月曜日に学校に来れば、体育館に緊急で召集された全校生徒。


俺は弓が見つかったんだと、期待に胸を踊らせた。



だけど・・・



壇上にあがった校長の口から放たれたのは、




『先週の金曜日、我が校の生徒、市ノ瀬弓さんのご自宅が、全焼する事件が起こりました。

それが昨日、警察から連絡が入り、放火と断定されたそうです。』



そして、俺は真実に打ちのめされる。



『犯人は、我が校の生徒3名。名前は明かしませんが、逮捕され、退学処分となりましたので、生徒諸君は心配せず今後の学校生活を送ってください。』



校長がそう言った途端、広がるざわめき。


そして、俺の耳に飛び込んだ事実。



『俺知ってる。安藤たちだぜ?シャッターに゛ざまあ悪女゛って書いたらしい。気に入らないからって親焼き殺すなんて超コエー!』



『案外市ノ瀬も殺されてたりしてな?』



『あいつらえげつない虐めしてたもんね~?中島さんもそれ静観してたし?

身体弱いのを盾にしてよくやるよねぇ?』



『ちょっと!中島さんの彼氏に聞こえてるよぉ?あ、セフレの市ノ瀬さんなんかどうでもいいかぁ。』



・・・姫が、俺の女?



・・・弓が、セフレ?



「どこでそんな・・・」



ボタンを掛け違えてたんだ?



俺が呆然としていると、目の前に現れたのは、



涙を目に溜めた、黒髪ロングの女。



弓の親友、三木広子(みきひろこ)



学年一の秀才の彼女は、弓と馬が合うらしく、登下校を共にしていた。



彼女は、俺に向かって右手を振り上げる。



バチーーン!!!



打たれた左頬が熱を持った。




呆然と頬を抑える俺に、三木は涙を流しながら力の限り叫んだ。



「こうなる前に!何で気付いてあげれなかったの!?

私の、親友を返してよ!返せ!!!」



「っっ、」



彼女の迫力に息を呑んだ俺と、ザワツく周り。



「お前等っっ、やめるんだ!!」



教師に取り押さえられた俺たちは、生徒指導室に連れて行かれた。

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