第34話
「そんな日々を耐えられたのは、親友のおかげ。」
落ち着いたらその女に連絡するつもりなのだと、彼女は目を細めた。
「そうしてついたあだ名が、゛悪女゛」
そう言って彼女は口角を上げた。
「か弱い姫と王子の邪魔をする、悪女。」
そう吐き捨てた彼女は、一筋の涙を流した。
「あの日・・・」
震える声を出した彼女は、嗚咽を漏らす。
「バイトの前に渉との待ち合わせ場所に行ったの。そしたら姫と友達がいて。
罵倒されたことに頭に血が上った私は、友達を殴ろうと手を振り下ろした。」
「・・・いっそグーでいったんだろうな?」
秋が低い声を出す。
それに苦笑いの彼女は、呆れたようにため息をつく。
「・・・はぁ、それからはまるでマンガ。友達を庇った姫を叩いちゃって、それを渉が目撃。
私が呼び出していきなり叩いたって友達に因縁つけられて、それを姫が肯定。
渉は私より姫を信じました。」
両手を上げた彼女は、自嘲の笑みを漏らした。
「バイト終わって帰ってきたらっっ、」
薄く笑っていた彼女は、絶望を顔に写す。
「家がっ、燃えてて。燃え残った、シャッターには・・・」
彼女は息を落ち着かせて涙に濡れた目を上げた。
「゛ざまあ!2人に近付くな悪女゛」
「チッ、」
秋が忌々しそうに舌打ちをこぼした。
「それからは記憶がない。うちは親戚もいないから、私は頼る大人がいない。
そんな私が生活するにはこの町しかないと思った。両親を殺した悪女は、あの町から姿を消したの。一件落着、でしょ?」
そう言って微笑んだ彼女は、目に絶望を宿した。
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