第31話

「だけどな?」



俺はこめかみに手を添えて首を傾けた。



「俺は、お前から聞きてえ。

お前がその時どう感じたのか、お前がどう思ったのか、それを知ることが俺には最も重要なことだ。」



俺の言葉に、弓の頬に涙が伝う。



「・・・おい、俺、なんかしたか?」



弓を泣かせてしまったことに、激しく動揺した。



弓は目元を抑えながらただ首を振っているだけで・・・



泣きやんで欲しくて、三度(みたび)胸に包んだ。



チラリと壮士に視線をやると、



「・・・プッ、」



笑い声が聞こえないように笑うのに必死な様子で。



俺の眉間に皺が寄った。



俺が壮士をガン睨みしていると、



「・・・れし、」



「・・・ん?」



胸の中で弓が何かを呟いた。



聞き直した俺に、弓が困ったような笑みを向ける。



「・・・どうしよ、嬉しい。」



そう言ってはにかんだ弓は、頬を朱色に染めた。

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