第29話

「それを手伝っていた真島弘人(まじまひろと)様が、あなたを見て確信したそうです。」



・・・真島弘人?あ、【黒蝶】のお犬様の一人だ。



首を傾げた私は、そんなことを考える。



「そして、秋様が3日前、あなたを迎えに行った。どうやらそこで確信したようです。」



三井さんはフワリと微笑んだ。



「あなたが運命の女だと。」




「・・・・は?」



私の声が低く響いた。



運命の女なんて、笑わせる。



初対面で感じるものは確かにある。



私も彼に゛感じた゛から。



・・・だけど、



「私は、もう誰も愛せない。」



私の呟きは、静かなリビングによく響いた。



もう、゛想う゛のはたくさん。



自分を押し殺して、他の女を優先する男の背中を見続けるのは、たくさんだ。



あのまま結婚を受け入れてたらと思うとゾッとする。



一生、あの【姫】に囚われて生き続けていたのだろうか。



自嘲の笑みを漏らしたところで感じた視線。



゛彼゛が、険しい表情で私を見ていた。




「・・・なんですか?」



私の口調も鋭いものに変わる。



「俺はお前だけを愛し続ける。

だから、話せ。゛渉゛になにをされた?」



その忌々しい名前に、私の体がビクリと強ばった。

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