第28話

「そろそろよろしいですか?秋様。」



黒髪短髪の爽やかなイケメンが、めんどくさそうに彼に問う。



「・・・チッ、」



舌打ちをして無言で顎で促した彼は、ソファーに深く腰掛けてタバコを吸い始めた。



それに軽く頷いたイケメンさんは、私に向き直るとニコリと魅惑的な笑みを見せた。



「では、初めまして。私はこちらの、新城組若頭、新城秋の側近をしております、三井壮士と申します。」



頭を深々と下げた彼に習って、私も頭を下げ返した。



「どうもっ、私は、」


「市ノ瀬、弓様ですね?」



被せ気味で言われた自分の名前に、目を見開いた。



そんな私を彼はクスリと笑う。



「あなたはここ1週間でかなり有名人になってましてね?

駅前のティッシュ配りに女神がいる、と。」



「チッ、」「・・・はぁ?」



三井さんのトンデモ発言に、なぜか忌々しそうに舌打ちした゛彼゛と私の間抜けな声が重なった。



「・・・自覚がないようですね。」



そう呟いた三井さんは笑みを深めた。



「そんなあなたに目をつけたのは、女を見る目は確かな方でしてね?」



・・・女を見る目のプロ、みたいな?



アイドルのプロデューサーとか?



私の間抜け顔は留まるところを知らない。



「秋様は、こう言ってはクサい言い方ですが、゛運命の女性゛をお探しでした。

しかし本人はこの通り不器用な方ですので・・・」



そう言って目を伏せた三井さんからは、哀愁が漂っている。



どうやらかなり迷惑をかけられてきたようだ。

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