第14話

side 秋



「若、お出かけで?」



壮士(そうし)が歩を進める俺に並んでそう聞いてきた。


壮士は親父の側近の鉄の子だ。



なのに顔は十分過ぎるくらい整っている。



短髪の黒髪に、切れ長の目。


体つきも、スラリとしている。


大柄な鉄とは正反対な知能派。



「私に似たのよ。つまんないわ?てっちゃんに似た方がイケメンなのに!」



百合さんが嘆いていたのを思い出した。



「・・・女を、迎えに行く。」



「・・・・弘人さんが、見つけたんですか?」



目を見開く壮士に、チラリと視線だけをやった。



「・・・ああ。【当たり】だそうだ。」



「・・・良かったですね?若。」



いきなりそう言ってきた壮士に、鋭い視線を向けた。



「・・・そんな女、いるわけねえ。」



そう言葉を吐き捨てた俺に、壮士は笑う。



「若?こうして出向いている時点で、何かを【感じて】いるのでは??」



「・・・チッ、」



図星な俺は、黙るしかなかった。



事務所を出て、車に乗り込む。



助手席に壮士が乗り込めば、



「【黒蝶】の通りの端にあるマン喫へ行け。」



「・・・はい。」



滑り出した車。



何かを感じるんだ。



この時の胸騒ぎは、お前を感じ取っていたからなんだろうな・・・弓。

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