悪の町

第10話

「・・・・・。」



虚ろな目の私が電車を降りたのは、悪の町。



゛新城゛が納める町。



手には鞄が一つ。



中には、6千円と、ガムと、ハンカチ。


そして携帯電話。



私はおもむろに携帯を取り出すと、画面を見た。



おびただしい数の着信と、メール。



鼻で笑ってそれをゴミ箱に捨てた。



「・・・男なんて、信じない。」



そう呟いた私は、歩を進める。



とりあえず、マン喫に入って、この町の求人に目を通した。



「住み込みって、あんまない。」



・・・とりあえずは、日雇いを。




小さな個室で、体を丸めた。









毎日を、【過ごす】




日雇いの仕事は女性にはあんまりなくて。



AVの勧誘だった時は、マジでヤバかった。



その日暮らしって、結構楽しめる。



キツくて、何も考える時間が無いから。




「っっ、お父さん、お母さん。」




個室で体を丸めて眠る私の口から漏れる、切ない声。



あの日、両親を失った。



両親と大事な牛乳屋は、私が帰った頃には、消し炭になっていた。




呆然と立ちすくむ私の前に、燃え残りのシャッターが目に入る。





『ざまぁ!


これを期に2人に近付くな!


悪女!』





「・・・なんでぇ?」



私が、何をしたというのだろう。



私は、一人の男を愛しただけ。



ただ、それだけ。



【悪女】な私は、両親を殺した。



「ごめんっっ、」



それからは覚えていない。



気が付けば、電車に乗っていた。



私には、両親の後を追う勇気も無いから。



私のような未成年が生きやすい町、新城の納める町へ。



この私の無意識の行動が、私の人生を大きく揺るがせた。





悪女は・・・この町で悪の帝王に出会った。

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