第6話

バカバカしくて笑い出した私に、怒りを露わにしたのは、村人だった。



彼女たちは、口々に私に罵詈雑言をぶつける。



厳しい表情でそれを聞く私と、戸惑いにオロオロする、中島さん。



そんな中で、私にはどうしても許せない言葉がでる。



「あんたなんて、卒業するまでのセフレのくせに!牛乳臭いんだよ!!」



「っっ!」



親父の職業は、確かに牛乳臭い。


牛乳ってのは、思ったより臭いがとれないしね。


でも・・・



私は、あんなハゲでも、ぐうたらでも、毎日3時に起きて牛乳を週6で配っている父を誇りに思っている。



旅行好きで連休を取るときは冷蔵庫が壊れたなんてすぐバレる嘘をつく父でも。



牛乳屋の娘ってだけで安易に吐かれる心ない言葉が、両親をバカにしているようで我慢出来ない。



私は咄嗟に腕を振り上げた。




パシーーーーン!!




気が付けば、中島さんがAを庇って、私の平手を食らっていた。



「あ・・・ごめ「姫っっ!!」」



我に返った私が手を差し伸べようとしたところで、彼女を呼ぶ切羽詰まった声。



愛しい渉の声だと、瞬時に思った。



「あ、たるくん。」



中島さんの震える声に、渉は眉を下げて走りよる。



「バカ、なにやってんだよ!風邪気味なんだろ?」



心配そうに、叩かれた頬に手を滑らせる。



「う、うん、それは、ね?」


「・・・弓。」



何かを言い掛けた彼女を遮り、渉の低い声が響く。



ビクリと震えた、身体。



「なんで・・・」



悲しそうに瞳を揺らす渉は、言葉がでないようだった。



「渉?こいつが姫呼び出して目障りだって、一方的に叩いたの!!」



Aが加勢する。



「ぇ、ぇ?ちが「そうだよね?姫!!」」



Aの剣幕に、中島さんは黙り込む。



「ね?!」



Aの一押しで、彼女は無情にも、頷いた。



「・・・本当なのか?」



渉が、悲しそうに、私へ目を向けた。



・・・なぁに?この茶番。



唖然とする私に向けられる、視線。

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