第4話

「ただいまぁ~。」


「お帰りぃ。」



家に帰れば父の間延びした声が返ってくる。



「・・・ちょっと、それ私の服じゃない?」



父が枕にしているのは、母が畳んだ私の服。



「へいへい、すいませんよ。

柔軟剤にクラッと来ましてね。」



そう言いながら怠そうに身体を起こしたのは、父・正(ただし)、62才。



最近ハゲてきたうちの親父は、酒が大好物。



毎日の起床時間は、3時。



配達して、昼間は集金。



だからこの時間は眠いのだ。



「皺が出来たらどうすんの?柔軟剤がいーんならタオルとかあるっしょ。」



私の低い声に、「へいへい。」を繰り返して枕に顔を埋めた父に、ため息を吐いた。



「お父さーん?私今日バイトだから、ご飯ここに置いておくからね?」



「へいへーい。」



母は一件配達が残っていてもうすぐ帰って来るらしい。



忙しい両親の代わりに今日は私が作ったのだ。



バイトの前に渉と会う予定だから、今日は早めに家を出る。




父のテッペンハゲに一瞥をくれて玄関に鍵を掛けた。

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