第3話

「はぁ・・・ほんとお似合いだよね!あの2人ー。」



取り巻きのBとCが頷くのを満足そうに見たAが私に侮蔑の視線を向ける。



ほんとに、お似合い。



2人は幼なじみで、昔から渉が中島さんの世話をしてきたらしい。



だけど2人は恋人関係にはならなかった。



近すぎて、対象には見れないんだって。



高校に入って渉は恋をした。



私と。



私はパン屋でアルバイトをしている。



そこに通ってくれたのが、渉。



学校一の人気者な彼が、私なんかに猛アタックしてくれて。



私も次第に惹かれていった。



今は、愛してる。



彼になんの不満もない。



アレを除いて、ね?



「もうすぐ卒業であの2人は結婚すんの。だから消えろ!バーカ。」



私の頭をバシンと叩いて村人達は屋上を後にした。



「ふふ、そんなん知らねえし。」



乱れた髪を整えながら、私の頬に涙が流れる。



それでも、私は渉に言えない。



身体の弱い中島さんに構わないでなんて。



渉との付き合いは、もう2年以上。



デートをしていれば彼女の体調が悪いと帰られ。


一緒に登下校もしたことがない。


それでも、愛されていると思うのは、



「弓。」



私のところへ、真っ先に来てくれるから。



フワリと抱きしめられて、感じる温もり。



「・・・渉。」



爽やかなマリンの香りが、鼻孔をくすぐる。



「はよ。」


「ん、おはよう。」



そうやって微笑めば・・・



「なんだ、今日はご機嫌だな。」



ほら、私が泣いたことなんてあなたは気付かないでしょう?



「渉がかっこいいからだよ。」


「フッ、バカ言うなよ。」



渉は気付かない。



「今日のお弁当には、シャケ入れたよ?」



「マジ?楽しみ。」



彼の気遣いは全て、【彼女】に注がれてるから。



手を繋いで出て行く私たちを見つめる視線が3つ。



この後の悲劇を、私は知らない。



私が悪女というのなら、そうなんだろう。



ごめんなさい。



お父さん、お母さん。

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