傘下

第63話

side 翠



3ヶ月、経った。



「ハッ、勘弁してくれ!」


「申し訳ありませんが、貴方様は龍綺様の敵ですので。」


「やっ、ヤメっ!ガァッ‥‥、」



私の日常は、変わらず。


龍綺様の敵は多い。


故に、私の手も、



「完了致しました。処分を。」



変わること無く、血に染まる。



屋敷へ帰り、


「龍綺様、只今戻りました。」


「ん、入り。」


「失礼いたします。」


龍綺様へ報告する。



自室へ戻り、朝を迎える。



そう、ここまでは変わらない私の生活。



しかし‥‥、


コンコン‥‥、「翠様、」



「・・・ハイ、お入り下さい。」



「失礼致します。」



夜、私が部屋へ帰ると、必ずノックされる扉。


私の生活の、ただひとつの変化。



部屋へと入ってきた万智は、お盆の上に乗ったホットミルクを差し出す。



お茶やコーヒーは眠れなくなる、という彼女の配慮からだった。


「・・・どうぞ。」


「ありがとうございます。」


差し出されたミルクを口に含む。



ただ、それを静かに笑みを浮かべて見ている万智はこの行為を毎日続けていた。

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