第64話

side 万智



「真琴様は、月に一度、゛しょっぽいまんじゅう゛という物を、ご友人のゆいか様へ送ります。」


「分かりました。覚えておきます。」



私の本家での生活も慣れてきて、漸く翠様が大半してくれていた真琴の生活の細部のお世話を、この時間を使って聞いていた。



本家に来てから龍綺様に聞いたことは、翠様はほとんど寝ないことだった。



夏はほぼ寝ず、倒れるまで仕事をする。



無意識に体を酷使する彼が心配だと。



龍綺様にそれを聞いて、少しでも役にたてればと、帰宅されれば直ぐにホットミルクをお出しするようにした。



初めは断られた。



「必要性を、感じません。」



無機質に放たれた言葉に、一度は止めようと思った。



けれど、


毎日の翠様を眺めていると、休憩という言葉を知らないかの様に動いていて、


どうしても諦めきれない私は、毎日それを運ぶようになった。



渋々折れて貰ったのは、1週間後。



それを毎日して、もう3ヶ月。



翠様と2人きりで過ごすこの、穏やかな空間は、私にとってかけがえのないものだった。

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