第61話

side 龍綺



「そっ、それはっ、ええよ?疲れてるやろ?ん、そや、このっ、鍋敷きええなぁ?」



「ん?疲れとらんし。大じょぶ、買ってくる!

あ、蛙ん?レジ行くから待っとって!」



スマホを耳に当てながらどピンクのフライパンを持って行ってしもうた。



「龍綺様、どうなされました?」



漸く万智の世界から戻ってきた翠が、光樹と万智と共にやって来る。



「真琴が、手料理、をっ、食わしてくれるんやと‥‥‥‥、」


「・・・・、」



呆然と呟く僕の言葉に、翠の目が見開いた。



「え?どうなされたのですか?」


万智の訝しげな声に、震える唇を動かした。



「あいつの料理は、凶器やな。」



「え?」



僕の言葉に眉を上げた万智は、翠へと視線を滑らせた。



「ええ。拷問に使えるか本気で検討した程です。」


「ええ!?」



翠の無機質な"正直"な声に、万智は本気でびっくりしとる。


しかし、これは、マジな話や。



「前に本家で作った時は組員全員寝込んだからなぁ。

やけど真琴の前で平気なフリしてたもんやからあいつ気付いてないんや。」



組員たちのヤセ我慢の顔色は今でも忘れん。



「顔色、青やなくて土色やったで。」


変な所鈍い真琴は気付かんかったからあいつらの努力も報われたわ。



「しかし龍綺様、フライパンなのでしたら前の煮込みうどんよりはマシに出来上がるのでは?」



あの時さり気なく少量で済ませていた翠が最早願望を口にする。



「ふむ、炒めもんのがマシやろか?」



そう考えていると、



「おまっとさーん。蛙たんがメール送ったって言ってたよん?」


「・・・真琴様、蛙が、なにか?」


「え"!?いやっ、別にぃ?

あ、万智ぃ?このフライパンどうよ?激萌じゃね?」



「・・・は、ぁ、」



蛙の言葉に翠が食いついたのを真琴が誤魔化し目を泳がせた瞬間、

僕の着物に入ってるスマホが震えた。

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