第59話

side 真琴



あー、マジ、ここまで来ると翠が怖くなってきた。



「万智、これとかどうよ?」


「え?い、いいですね。」



私達が雑貨なんかを見ている間も突き刺さる視線。


「ククッ、やりにくそうやなぁ?」


「てめぇ、面白がりやがって。」



私らの背後で扇子を揺らすバカ龍綺に鋭い視線を送った。



龍綺は私の頭を撫でると、目を細める。


「今は自分の気持ちと照らし合わせてる段階や。堪忍したってや、万智。」



「・・・はぃ。」



頬を染める万智は、翠へ向かってふんわりと微笑んだ。



その笑みの矛先は、


「ッッ、」



顔を真っ赤に染める、翠ちゃん。



「萌倒してるやん?」


「なんやのそれ、お前お得意のマコト語か?」



関西弁を話してみました。


何故か嬉しそうに扇子を揺らす龍綺は無視。



「いいよねぇ。私の周り、濃いカップルしかいないからさぁ?

初(うい)よねぇ。可愛いねぇ。」



ニヤニヤと、はにかむ万智と真っ赤な無表情、翠を観察する。



「真琴、変態くさいで?」


「うっさい、本物。」



頬を膨らませる。


本物の変態に言われたくねえしっ。



「ククッ、かいらしいなぁ、キスしてもええか?」


「やっ、やめっ、ヤメロッ!」


「フフ、ええやないか。」



マジで顔を近付けてきた龍綺から少しでも離れるため、その辺にあったフライパンで防御した。



チッ、顔が熱いし。


火照る顔を見られないようにそっぽを向けば、



「・・・・真琴?どないしたん?」


「アレ、」



龍綺だけに分かる様に店の外へ顎を上げた。


「ああ、彼女な、」


「あんたの元愛人?」



店の外からは、禍々しい雰囲気を漂わせ、笑顔で龍綺を‥‥‥‥、いや、



「万智を、見てる?」


「ん、そやな。」



龍綺の元愛人の阿婆擦れ共の1人かと思いきや、視線の先は未だに翠と見つめあっている万智だった。

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