第53話

部屋を見渡し、私の物が思い当たるだけ全て移動している事に軽く面食らった。



ギシッ、



ベッドに腰掛け、真琴を思い浮かべる。



龍綺様の前の奥方は、気性が荒い、なんて表現じゃ足りなかったから、真琴のイメージも初めは同じ様な人間なのでは、と勝手に思ってしまった。



千佳子様は、気に入らない人間は排除し、気に入った人間には代償を求めた、と聞く。



男性にはベッドで、女性には貢ぎ物や世話を。



西宮は父が東の出身だというだけで、千佳子様の視界にすら入れて貰えなかった。



龍綺様はそんな千佳子様を静観し、興味が無い様に愛人を囲っていたから、似たもの夫婦なのだと軽蔑すらしていた。



しかし、西を揺るがしたあの大事件で、龍綺様の゛想い゛を知った。



人生をかけた復讐を誓った龍綺様の覚悟は、東の獣妃までをも巻き込み、深い傷を負わせたという。



だけど東の獣妃を結婚式に呼ぶほど未だに懇意にし、その親友の真琴様をお嫁に貰った。



所詮傘下の西宮には、分からない事だらけだった。



だけど、真琴様を見て確信した。



彼女はとても、魅力的だと。



傷ついた龍綺様に、もう一度恋をしようと決心させるほどの、魅力が彼女には、ある。



・・・ちょっと、変わった格好をしているけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る