第52話
失敗した、と思った。
翠様は、触れることに酷く怯えていた。
それを私は自分をあの綺麗な銀色の眼に写して欲しいが為に、触れてしまった。
後悔が滲む。
私が翠様の背中をジッと見つめていると、真琴の弾んだ声が聞こえた。
「うーわ、マジじゃん。スゴいね万智!」
「なにが、でしょうか?」
先ほどのやりとりに凄いと思う要素が見当たらない私は、訝しげに首を傾げた。
そんな私に、真琴は笑顔を向ける。
「翠があんなに失礼な態度とったのに気付かない程動揺してたんでしょうが。
いいねー、キョドる翠も可愛いじゃん、ね!?」
「は、はぁ……、」
嬉しそうに廊下の角を曲がっていった翠様の背中を見つめた真琴様は、興味を失った様に再び首をひねる私の手を引いて歩き出した。
「ココだから。着替えろ、じゃ!」
乱暴に私を部屋に入れた真琴は、ウインクをして自室へ戻ってしまった。
「・・・・はぁ、」
真琴は、思っていた印象と違っていた。
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