第48話

side 翠



「ここが、厨房です。

毎食、龍綺様と真琴様の膳は味見し、安全を確認致します。」



「・・・ハイ。」


足を引き摺る光樹に合わせながら本家を案内しました。



「・・・貴方も龍綺様の側近なのですから、立場は同じです。敬語はおやめください。」


「・・・・・・・分かった。」



困ったように笑った光樹を不思議に思うも、再び歩みを進めた。



「最後に、ここがあなたの部屋です。

龍綺様たちのお部屋の向かい側ですので。

部屋は防音がしっかり施されています。

それでは・・・、」



「・・・ちょっと待ってくれ。」



部屋を後にしようとすると、光樹に呼び止められる。



「何か。」


振り返れば、光樹の鋭い目が私を射抜いた。


「お嬢を、見てあげてください。」



「ッッ、」



突然の懇願に、私の目は見開かれる。



「私は彼女を無視などしたことはありませんが。」



動揺に声が震えるも、私の表情は変わらない。

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