第47話

「万智、真琴の世話は今まで翠がしとったんや。」



着替え以外、真琴の全てを世話していたのは翠。



揺れる目を翠に向けていた万智は僕の声に顔を引き締めた。



「やから真琴の事は翠に習うとええ。」


「ちょっと、本人目の前にいんじゃん?

本人に聞こうや!」



すかさずツッコンできた真琴へと呆れの視線を向ける。



「・・・それやったら意味ないやろ。」


「はあん?」



完全に意味が分かってない真琴の頭を撫でて目を細めた。



「ホンマ、かいらしいやろ?僕の嫁さん。」


「はい。羨ましいです。」



ニッコリと微笑む万智は、眩しそうに目を細める。



西宮家の母親は、すでに他界してる。



上がった報告書では、人質となり救い出されたが、その時に受けた傷が元で幼い万智を残して息を引き取った。



その時に西宮組共々西宮親子を支えたのが同じ傘下の高山組(たかやまぐみ)



そこの息子が万智にご執心なんやと。



しかし西宮は光樹を婿に選んだ。



何かありそうやから、更に深く調べる様、家の情報屋に依頼した。



「万智の部屋は翠の部屋の隣やからな。

後で案内してもらい。」


「はい、かしこまりました。」



「もういい?万智っち私とがーるずとーくしよう?」



僕が撫でる手を払い除けた真琴が、嬉しそうに万智の手を取る。


「で、でも・・・、」



「ええよ。将来の兄嫁と仲良くな?」



「行くよっ!」



戸惑う万智の手を引いて真琴は襖を勢い良く開けて部屋を後にした。



「騒がしいなぁ、」



ゆるりと上がる、口角。



千佳子が支配していた頃の西は既に跡形も無く、真琴の存在は組員たちにいい影響を及ぼしてる。


あの明るい人格のせいか、全てを包み込むような器のせいか・・・、



なにより、


時折見せる本職顔負けの裏の表情に、魅せられる組員は多い。



「ククッ、面白ぅないのぉ。」



僕の真琴や。


目を細めて煙管を燻らせた。

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