第46話

side 龍綺




目の前で苦い顔をする翠。



感情の起伏が一切無い翠にはいい傾向やった。



彼には辛いことかもしれん。



このまま、何も感じず、今の生活をした方が翠にとっては楽なんかもしれん。



やけど僕は‥‥、



光樹の背後で静かに座する彼女を見て思う。



女性を愛する、喜びを知って欲しい。



例え今、苦しむことになっても、や。




「万智は真琴に付いて貰う事になった。

光樹は翠に付いて学びや?」



「はい。承知致しました。」


「よろしくお願い致します。」



光樹が翠へ、万智が真琴へ頭を下げた瞬間、動揺に歪んでいた翠の顔から一切の感情が消えた。



「・・・では、まずは本家を案内致します。私のことは翠とお呼びください。

あなたは・・・、"光樹"でよろしいでしょうか?」



「はい。敬語もいりません。」



「・・・私のこの言葉遣いは治すことは難しいかもしれません。

申し訳ございません。」


「え!?あ、すいません。」



頭の下げあいをする2人を扇子越しに目を細めて見ていると、真琴の呆れたような声が聞こえた。



「あんた等、めんどくさいからさっさと行きな!」



「・・・失礼致します。」



頭を下げた翠が光樹を伴って部屋を出て行くのを確認して視線を万智へと戻した。

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