第41話

僕を見返す彼女の目は、とても、強い。


やけど、や。



「たった一度ですら、裏切られたら翠は壊れる。

いや、もう壊れてるから粉々になるだけなんやけどな?」



笑みを深めた僕に、万智の表情も硬くなる。



「物事に絶対はない。この世界に生きて、僕はそれを分かりすぎるほど分かってる。」



驕れば、死を招く。


油断は、自身だけでなく他人までをも不幸にする。



僕にとってのその象徴は、莢(さや)であり、ゆいかなんや。



だけどあえて僕はこの娘に難問を突きつける。



「翠を、裏切らんと誓えるか?

僕の"願い"を聞きいれれば君たち親子はこれから、苦労の日々が待ってる。」



西宮に微笑めば彼の目は鋭くなり、男としての欲が見え隠れする。



頂点を見たがるのは、男の性(さが)



特に僕たちのような力がすべての世界では。



西宮の前に差し出されたんは、最強のカード。


西の地、嘲笑され続けていた西宮が西の頂を眺めるチャンス。



食いつかんのは、



「万智、お受けしてもいいか?」



男やない。

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