第40話

「翠はな、君が想像できないほど、闇が深い。」


「闇、ですか。」


「ん。」



この子が極道の家の出とはいえ、翠の深すぎる闇は、見当もつかんやろ。


彼女の表情は真剣そのもので。


翠を受け入れようとしているのは嬉しいが‥‥、



「君には、重すぎるかもしれん。

僕はな、真琴と同じくらい、翠の事が大切なんや。

僕の片われやと思うとる。」



本心やった。


彼は僕の影だとしか思ってないみたいやけど、翠は僕の分身。


彼の存在はとても愛おしい。



「やからな?中途半端に彼を受けて、後で投げ出すような事があれば、僕は君をこの世から消さないかん。

あ、堪忍してや?死に行き着くまでに、苦しんで貰わんといかんからな。」



ヒラヒラと扇子を振りながら楽しげに言葉を紡ぐ。



万智は顔を青くし、西宮と光樹は表情を固くした。



「ちょっと!脅してどうすんのよ!」



背後で真琴がまた僕の背中を抓った。



ホンマ、痛いんやけど。



「知っておいた方がええやろ?

僕の翠を傷付けたらどうなるか。」



微笑んだ僕に真琴が嫌そうな表情を返した。



「BL反対。」


「なんやのそのびーえる、いうんは?」


「ウッサイ。はい続けてくださーい。」



興味を失ったように真琴が手を払うもんやから、僕は潔く諦めて再び視線を万智へ移した。

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