第30話
side 翠
隠しきれた、つもりだ。
私のこの"感情"を。
私自身、この感情の正体すら分かっていない状態。
消化しきれない焦燥感は、私の中で疲れとなって湧き上がる。
目を細めて扇子越しに私を見つめていた龍綺様が徐ろに口を開いた。
「僕と真琴、これからデートやから。
組の仕事は終わってる。
繁華街の巡回はデートの後で僕と真琴で行くから。
翠、今日は自室で休み。ご苦労さん。」
「・・・ですが、」
繁華街の巡回は3件はあったはず。
お2人を煩わせるわけにはいかない。
しかし龍綺様は私に鋭い視線を送る。
「顔色悪いで。最近また寝てないやろ。
今日はしっかり体を休め。組長命令や。
・・・・下がり。」
「・・・・承知致しました。」
龍綺様の言葉に、引かざるを得なかった。
確かに、この状態でキャバクラの女性たちの相手など難しい。
頭を深々と下げ、退出した。
長い、廊下を、何度も曲がる。
私の部屋は最奥。
龍樹様の自室の真横にある。
バタン・・・、
部屋へ入った途端、ベッドに倒れ込む。
目の上に腕を置いて仰向けになれば、彼女の甘酸っぱい香りがした。
「っっ!?」
香りの出処は、肩。
(・・・そういえば先ほど、)
ぶつかったのを思い出した。
上着を脱いで、その上にうつ伏せになる。
仄かに香る、彼女の香りに、私の意識はあっという間に闇へと誘われた。
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