第29話

淡々と語っているつもりでも、翠の言葉には何か重苦しい雰囲気が漂うてる。



「西宮は、どうやら光樹以外に後継者がいないようです。

なので、兼ねてから話が来ていた同じ傘下の組に‥‥娘を嫁がせる事で組を終わらせるつもりかと。」



フム‥‥、分かり易いなぁ。


どうやら翠は、西宮の娘に何かを感じたらしい。



しかしそれは流石翠、というとこやろか。


ほんの一瞬しか変化を見せへんかった。



僕の腕の中の嫁さんも、結構鋭いんやけどな・・・


僕がちょっかいかけてるのもあるけど、真琴でも気付かない翠の変化。



「んー、西宮が無くなるんは、惜しいなぁ‥‥?」



翠に、問いかけるように言葉を放つも、翠はただ一点、僕の目をまっすぐに見つめてるだけ。



「そや、どうせ吸収されるなら同盟の誰かでもいいんやないか?」



翠の眉がピクリと上がる。



傘下やったら会う機会はほぼ無い。


やけど同盟となったら‥‥、


「龍綺様のご随意に。」


嫌でも顔を合わせる。



若干辛そうな顔をした翠。


それには流石に、


「ん?翠、あんた‥‥「真琴?」」


僕の嫁さんが気付いたから名前を呼んで遮った。



「なに。つうか離れろド変態。」



吐き捨てるように言った真琴のかいらしい耳に唇を寄せた。



(翠の事は今つつくな。これからデートでおもろい事するからそれまで黙っとき?)


「ンッ‥‥、」


チュクリ‥‥、と耳を舐めて離れると、真琴の囀りが僕の主に下半身を刺激する。



「てめぇ・・・、」


「ククッ、堪忍。」



本気で怒りだした真琴に謝って翠へと視線を滑らせる。



僕の扇子越しに細めた視線に、翠が居心地悪そうにしているのが見て取れた。

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