第25話

「それでは明日、本家にいらして下さい。私はこれで。」



早々に腰を上げ、踵を返した私の背後で、西宮が立ち上がる音がした。



「見送りは結構です。私はそのような身分ではありません。」


「そんな、組長の右腕が何を…、」


「私は、」



背後の彼に視線だけを向けた。



「私は、龍綺様の"影"に過ぎません。」



私の言葉に、光樹の眉がピクリと動いた。



そのまま襖を自分で開け、玄関を目指す。



廊下を歩きながら、考える。



彼女の存在について。



「・・・関わりたくない。」



思わず唇から溢れた。



それなのに私の頭の中では、彼女の決められた未来が反芻されている。




同じ傘下の息子からの申し出を受けるらしき西宮。



彼女は近い内、その男のものとなり、優秀な西宮は今の代で幕を閉じるのだろう。



西宮の今の若頭は、光樹。



その光樹が本家へ行くとなれば、西宮の打撃は大きい。


しかしそこは、龍綺様が放っておくはずはないはず。



「私には、関係ない。」



自分に言い聞かせる様に呟いた時、玄関にたどり着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る