第24話

「ええ、素晴らしいものを拝見致しました。」



「そうですか、お褒めいただき嬉しいですな。」



本当に自慢の庭なのだろう。


彼女の機転に感謝した。



「光樹のことなんだが・・・、」



言いにくそうな西宮の言葉を遮るように、私は強い目を向けた。



「龍綺様が、"欲しい"とおっしゃったのです。拒否権など無い事はご承知の筈ですが。」


「・・・・、そう、だな。」



苦渋の表情の西宮に、珍しく私の中で苛立ちが生まれた。


どうやら、彼女の影響がまだ出ている様だ。



「それに彼は、結婚などしたくないように見えますが・・・。」



私は早々に確信を突く事にした。



あまり長居して、また彼女に会いたくはない。



私の言葉に光樹は表情を変えず、西宮は苦々しい表情を浮かべた。



「彼は東で、全てを勝手に決められてきた。あなたはここでもそれを強いるつもりですか?」



「ッッ、」



苦悶の表情の西宮は、光樹を見た。


私と彼は、似ている。


親に勝手に敷かれたレール。



無理やり歩かされ、私は抵抗せず、彼は抵抗故に道を踏み外した。



「彼が龍綺様の元へ来たくないというのなら、私が龍綺様にそう伝えます。

私は本日、"彼自身"を勧誘しに来たのです。」



強い目を向けた私に諦めたように頷いた西宮は、光樹に優しい目を向けた。



「こいつは、優秀だ。向上心もあるし。

断る訳がねえ。な?光樹。」



西宮の言葉に、漸く光樹が口を開いた。



「すいません、頭。」


「いい。まぁ、心配すんな。娘はあの通り見た目だけはいいからな。同じ傘下の息子であいつを是非嫁にって奴がいてな。西宮は俺の代で終いにするよ。」



彼女の行く末に、私の背中に嫌な汗が流れた。



・・・何故だ。



私は、あの女性に何を求めている?



「ッッ、では、何か纏める荷物などはありますか?」



考えを振り払う様に光樹に言葉を吐き出した。



「・・・・いえ。何も。」


そう返事を返した光樹を確認して腰を上げた。



「では、行きましょうか。」


「おいおい、送別会も無しかい?」


苦笑いの西宮に首を傾げる。



「送別会、ですか・・・」



去る者を惜しむ、あの会の事だろうか。



私には存在意義が分からなかった。

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