第19話

翌朝、気怠い体を叱咤し、本家を後にした。



西宮へ到着すると、きちんと教育された組員が礼儀正しく私を出迎えた。



私の年齢や風貌のせいか、龍綺様抜きでは舐められることが多いこの世界。



しかしきちんとしている組はこうやって無駄な仕事を減らしてくれる。



頭を下げる組員に促され、組長の待つ部屋へと通される。



「到着されました。」


「・・・入れ。」



静かに通された部屋には、壇上にあぐらをかく西宮組長。



その背後に見えるは、刑務所に入る前の面影は一切ない、柊光樹が静かに座する。



金髪の髪は黒く染められ、軽く後ろへ流されている。



金色だったその目も自身の持つ色、薄茶色で、幼さのあった目元はこの10年近い年月の厳しさを現している。



皮肉気に歪められていた口元はきつく結ばれ、彼からは一切の隙が伺えない。



「今日の用向きは、一体?」



西宮が静かに口を開く。


私は光樹から視線を移すと、彼の目の前に座し、口を開いた。



「龍綺様が、そちらの彼をご所望です。」



「ッッ!?」



私の静かな声に、西宮の目が見開かれた。


柊光樹は自分がこの場に居ないかの様に、ただ前だけを見つめていた。

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