第10話

「翠、準備はええか?」


「はい。」



目の前には、いつもの着物ではなく、紋付きで体を包んだ龍綺様。



真琴様の彫師としての修行は、実に9年、かかりました。



その間、龍綺様は年に数回の逢瀬、


"報告"で見つめる真琴様の日常の姿、


たったそれだけで愛を育んだ。



突然の婚姻には正直驚きましたが、


真琴様が間髪いれずに頷かれたのを見ると、


恐らくこれは遅い位だったのでしょう。




『結婚するまで体はまっさらなまま』



そう望んでいた真琴様の為、龍綺様は愛人も作らずに彼女をプラトニックに愛した。



どうやらそれは、想像を絶する凄い所業だそうで。



組員たちの中には龍綺様を不能だと罵る輩もいました。



そんな彼等はもう二度と口を開けないように致しましましたが。



とにかく、それほどお辛い事だったようです。

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