第7話

side 龍綺



「何をなさるのですか。」



冷静な翠の声が僕の胸の中で聞こえ、苦笑いを漏らす。



「君はな、気付かないかん。」


「何を、でしょうか。」



僕の胸の中で顔を上げた翠の表情には、一切の色はない。



「君が唯一、気を許しているんは僕やって自負がある。」


「・・・そうですか。」



今んとこはな。


拾ったのは僕。


生い立ちから翠は、人間というものに感情が無い。



翠が今、唯一信じているんは、僕。



そんな僕にも・・・、



「君、今震えてるの、分かるか?」


「!!」



震える、翠の体。



翠自身は全く気付いとらん。



驚愕に目を見開いた翠は、自身の手へ視線を向けた。



そこには、小刻みに慄える翠の綺麗な手。



「・・・・・・いつからでしょうか。」



震える翠は、何を想う?



「最初からや。」


「ッッ、」



目を見開いたまま固まる翠の体を離して、目を合わせた。



「こうやって、心と体を合わせていけばいい。」


「心・・・体・・・、ですか?」



訝しげに首を捻る翠に頷く。

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