第6話

そして・・・、




我が西龍会(せいりゅうかい)の護衛頭が殺され、



私は、あの男に会った。




あの男にはなにも感じない。



だけどココロとは裏腹に、あの男を目の前にした時、私の体は変化を見せた。



震える私の体。


ゾロリと背筋を何かが這うような感覚。



何より、


「アンドロ。」


捨てた名を呼ぶあの男の色欲にまみれた目に、嗚咽が沸き起こる。



しかし何より安堵したのは、あの男に欲情しなかったことだ。



恐怖以外は、なにも感じなかった。



それを取り払うように、あの男の太股にナイフをつきたてた。



「翠、良かったなぁ、あの男、もう終いやで?」



あの男が連れて行かれ、部屋に静寂が戻った時、龍綺様はそう、言われた。



「そう、なのでしょうか。」



あまりにも呆気なく、私の思考はおいついてはいなかった。



あの男の血のシミを見つめる私に、龍綺様の穏やかな声が降る。



「終いや。もう、解放させたげたらどうや?」


「・・・あの男をですか?」


私の訝しげな声に、龍綺様は一瞬目を見開き、呆れたように首を横に振った。




「阿呆。君をや、君。翠を、゛解放゛したげてや。」



「・・・。」



龍綺様は、偶に難解な言葉を口になされる。



私の日本語能力がまだまだ脆弱なせいだろうか。



難しい表情の私を見て、龍綺様はフワリと私をその腕に包まれた。

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