第53話

ーーー、



帰りの車内、行きとは違う、”悪い空気”が流れていた。



2人きりで食事なんて。奏は何考えてるわけ?



『今日はお会いできて、良かったです。』



そう微笑んで甘い残り香を残して帰って行った瑠璃子。


見送る奏は相変わらず無表情だったけど、なんだか楽しそうだった。




「奏の浮気者。」


「あ”?」



凄んでくる奏なんて怖くないもんね。口を尖らせて抗議の目を向けた。



「あの女がいい女でも、俺はゆいかちゃんの味方だから。浮気者め。」


「意味不明だ。キモい。」



呆れたようにため息を吐いた奏からツンと顔を逸らした。



「・・・ゆいかちゃんに顔向けできないよ。」



ボソッと吐かれた言葉は、本心からだった。




このスケベ浮気男のことがゆいかちゃんにバレちゃったらどうするわけ?



組が潰れる。絶対そうだ。


ゆいかちゃんが拳を挙げれば、付いてくる組員は絶対いるし。俺もその一人だし。



「まっすぐに、彼女の目が、見れますか?」



「・・・シネ。」



目を細めてそう言った俺に、今日2回目の死ね発言。



・・・酷くね?

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