第52話
しかし、後ろの秘書の、”私の主人、優秀でしょ?”的な笑みだけはなんとなく、好きになれないな。
そして瑠璃子を見て、奏は口角を上げた。
「長い付き合いになりそうだな。」
「ええ。そうしてくださると嬉しいですわ。」
甘く笑い返す彼女と、奏が卓上で握手を交わす。
その光景に、俺は目を見張っていた。
奏が女性の社長を認めたことは、初めてじゃないだろうか。
差別じゃないが、これまで会ってきた女性の社長は、私利私欲にまみれた人間が多かった。
そんな中で瑠璃子は、それに当てはまらない。
全てを持っている彼女の、その状況に墜ちることのない威厳あるプライドがそうさせているからだろう。
莫大な利益が見込める商談が成立したことに、奏も上機嫌のようだ。
ゆいかちゃんにいい報告ができそうだとホッと息をついた時だった。
「お食事…なんですが、」
瑠璃子が口を開いた。
「できれば、新城さんと2人で、お願いしたいのですが…、」
「それは、「田島。」」
すかさず断ろうとする俺を、奏が低い声で制す。
視線を向けた俺に、奏は口角を上げた。
「いい。下がれ。」
「っっ、ですがっ、」
なおも食い下がる俺に、
「下がれと言っている。」
絶対的な命令が下った。
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