第51話

「瑠璃子様。こちら、資料でございます。」


「ええ。ありがとう、青木。」


その言葉で漸く、彼女が秘書を連れていることに気がついた。


瑠璃子には格段に劣るが、彼女もかなりの美人。


だけど高く結わえられた黒髪に、パンツスーツ、そして少し尖った目から察するに、彼女はきっと性格がキツい。


うん。ダメ。俺の趣味じゃないな。



すぐに興味を失った俺も、自身の鞄から事前に送られてきていた資料を取り出した。



「先に、お仕事の話をしてもよろしいでしょうか?」


「ああ。構わない。」


そう答えた奏に、彼女はフワリと笑う。


一応、接待、なんだけどな。どうやら彼女も仕事人間らしい。



「この資料についてですが…、」



ーーーー、



「以上でございます。」


彼女のプレゼン能力は、圧巻といって良かった。


奏はプレゼンの間でも、”使えない”と分かればすぐに話を終わらせてしまう。


しかしそんな奏が口を挟むこと無く、彼女は説明を終えた。


そして質問の時間で奏が放つ問いに的確に、全てを答え上げた。



・・・いい女だな。


全ての立場を抜きにしても、いい女に出逢えるのは気持ちがいいもんだ。


そういう女を眺めるのも、ね。

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