第49話
「「・・・。」」
女性の代表相手の接待の前は、この沈黙が怖くて仕方がない。
今までのほぼ全員が、大なり小なり奏個人に求めるものがあったからだ。
基本はあちらが招く側だからこっちが後で到着することが多い。
けど近衛財閥みたいに大きなところは流石と言おうか、ごゆっくりタイプらしい。
「チッ、」
舌打ちを吐き捨てた奏がもう一本タバコを取り出す。
すでに3本は吸ってるからね。
「肺がんになるよ?」
「シネ。」
「・・・。」
火を点けながらも注意してやった俺に暴言を吐くなんて、酷くない?
がっくし頭を垂れている俺だけが奏の八つ当たりの被害に遭っているのはなかなか納得いかないもんだ。
鉄よ。接待に同席できない程の怖い顔の君を恨むよ。
奏のタバコがこれ以上増えたら俺がゆいかちゃんに怒られるんだけど。そういう想いを込めて奏を見ていた俺に、
「キモい。」
いつもより丁寧に吐き捨てられた言葉。
それに俺が口を尖らせてすぐ後の事だった。
『失礼致します。新城様?近衛様がご到着されました。』
「・・・通せ。」
『かしこまりました。失礼致します。』
襖越しに聞こえた言葉は、救いなのか。それとも、地獄への招待状か。
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