第48話

でもまぁそれでも、



「チッ、帰りてえ。」


「コラコラ。」



奏が行きたくないのは変わらないわけで。



料亭への車内で、奏は5分おきにそう吐き捨てる。


そろそろ突っ込むのめんどくさいんだけど。



ため息を吐き出したところで、漸く料亭へ到着。



「着きやした。」



鉄の声で俺は素早く車を下りた。


「いらっしゃいませ、田島様。」


「女将、久しぶりですね?」


「え?ええ…。」


頬を染める女将は40代の綺麗な女性。



美味しいんだよね。


脂がノッてるよね。



ガンッ!!



俺の笑みに頬を染める女将を凝視してたら、奏くんが車の窓を叩いた。



ちょっと。窓割れるから。


そう注意できれば苦労はしない。苦笑いを零してドアを開けて頭を下げた。



「いらっしゃいませ、新城様。」


「ああ。」



仕事モードに切り替えた女将にそれだけを言った奏の代わりに、口を開いた。



「近衛様のお出迎えもよろしくお願いしますね。奏様をご案内してください。」


「かしこまりました。新城様、こちらへ。」



無言で付いていく奏の後ろを追い、広間へと足を踏み入れた。




ウケ狙いで奥の部屋に布団を用意させようと思ったけど、奏以前にゆいかちゃんに殺されるから、それはやめておいた。

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