第47話

「日取りは決まったか?」


「は?」



執務室に入るなり、そう聞かれた。


俺の流石の美顔もマヌケ顔になっているであろう。いきなり出鼻を挫かれたことに呆然とした。



「報告しろ。」


なんでかっていうと、奏がめちゃくちゃ機嫌がいいから。



「おい。キモいぞ。」


いつもの悪態なのに、なんだろ。後光が見えるよ?


「隼人?」



どしたの、その、優しい目は。



「熱でもあるの?」


「あ”?」



今度は、いつもの通り、不機嫌顔が拝めた。


「決まったよ。場所はいつもの料亭押さえといたから。時間も、こっちで決めた。先方はソレでいいって。」


「チッ。」


呆然と説明する俺に嫌そうな顔を向けてくるのは、変わらないんだけど…



なんとなく、機嫌がいいんだよね。




なんだよ。なに?


俺の疑問の答えは、奏の手の中に。



電話をかけているらしい奏は、すぐ出た相手に甘い声を出した。



「ゆいか?決まったぞ。すぐに帰って説明してやるからな?」



優しく紡ぐ、その言葉に、俺の頬が赤く染まる。



「ん。…ああ。でも、」


口角を上げた奏は、妖艶な色気を大放出した。


「”信じてる”だろ?」




・・・どうやら、ゆいか様のご援助のお陰らしい。



「心配すんな。あの財閥、とことん搾り取る。」


「・・・。」



その後の悪い顔は見なかったことにしよう。

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