第46話

side 隼人



「はぁ…。」



うん。ため息出るよね。


さっきの電話で決まった事項を伝える為に執務室の扉の前に立った俺の、ノックをしようとする手は全く動いてくれない。



多分俺の中で『危険だ!』と、叫ぶリトル隼人が両手でバッテンマーク作ってるからだと思う。



先ほど、近衛財閥の近衛瑠璃子(このえるりこ)社長とコンタクトが取れ、”接待”の日取りが決まった。



あっちの秘書の淡々としたしゃべり方に、理不尽な憤りを感じる俺。


お前んとこのトップ、ちゃんと手綱握っとけよと悪態を付きそうになったが、それはこちらにも言えることだとため息が漏れた。



それを今から報告するわけだ。



・・・万年筆が刺さったとこ、まだ痛いんだけど。



「はぁ…。」


コンコン…



もう一度ため息を吐いて扉をノックすれば、


「・・・・入れ。」


奏のいつも通りの無機質な声が返ってきた。




執務室に入る前の一瞬で考える。



ここはハッピーに、


「オッケー貰えたよ〜!?」


と笑顔で言うのか、


「若、”接待”の日取りが決まりました。」


とお堅くいくのか、



「失礼いたします。」



迷うよね〜?

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