第44話

「えー実はですね。」


「うん。」



『ぱぱ!』


『いいか、隼人は今からゆいかに殺られるわけだ。お子様にはキツい。目を閉じとけ。』


『うー?へい!』


何故か正座で向かい合う私達の耳に、わざとらしく響く奏と秋の会話。



「「・・・。」」



目が合った隼人はそれはもう、顔色が悪かった。


どうぞ、続けてください。そう言って手を差し出した私に、隼人がニヘラと愛想笑いを浮かべた。


「えと、その女社長、惚れやすい、とかで、恋愛トラブルが絶えない方、らしいっす☆」


「・・・。」


舌を出して肩をすくめた隼人に、本気で殺意が沸いた。


「俺もさ、そんなんやなんだよ?だけどさぁ、仕方ないよねー?仕事だって仕事!」


「・・・。」


どうやら開き直ったらしい隼人は、軽さをフル発揮してあぐらをかいた。


・・・うん。



「接待は行ったほうがいいよ?」


「あ”?」


「えっ!?で、でしょう!?」



私の第一声に、奏の機嫌がここ数年で最低レベルに。


隼人は一瞬驚いた後、奏にドヤ顔を見せた。


とりあえず、隼人が奏に蹴られるのを見て、秋を膝に乗せる。



「ああ、でも…」


「あ?」「いって…ん、?」


私の続いた言葉に、


「その人が奏を好きになったら、私、怒っちゃうかも?」


奏と隼人の表情がはっきりと凍りついた。



「頑張ってね?」


「「・・・。」」



笑顔の私の機嫌の悪さを、2人はどこまで読み取っていたのか。


それは2人にしか、分からない。

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