第42話

「それが必要なことなら、協力する。でも、理不尽なことだったら、協力はできない、かな。」


「必要!必要だよ!すごく!」



隼人がズイと顔を近付けてくるのに、若干怯んだ私。それに気付いた隼人が気まずそうに身体を引いた。



「その会社とのプロジェクトってさ、組も得するんだよね。親父から念を押されてて…」


「・・・そう。」



ちょっと、いやかなり嫌だけど、どうやら組にも関わる大事なプロジェクトらしいし。


私事でダメにするわけにはいかない。


しかも。隼人が奏の目を盗んで単独頼みに来るなんてよっぽどのことみたいだし。



・・・モヤモヤするけど。



「分かった。説得してみるから。」


「ほんと!?」


「うん。ね?奏、行くでしょう?」


「は…」



私に向かって四つん這いしている体勢の隼人の背後に、今にも牙を向きそうな虎さんを発見した。



ゴゴゴ…なんて効果音が付きそうなその光景に、後ろを見ていないのに隼人が生唾を飲み込む。



「・・・いやだ。」


「もう、駄々こねてる場合じゃないでしょう?」



どうしても嫌らしく、とりあえず隼人を踏みながら答えた奏は、温度の低いを目を私へと向ける。

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