焦慮

第41話

side ゆいか



「接待?」


「うん。」



膝の上の秋と一緒に、首を傾げた。


1歳の秋はもう保育園にも慣れた様子。私が休みの時は常にこうして接している。



目の前で申し訳なさそうに眉を下げる隼人の表情の意味が分からなくて。



会社の社長をしている奏が接待をするのが少ないわけがない。


どうして今更、私の顔色を伺うようなことをするのか。



首を傾げる私に隼人が紡いだ言葉は、納得がいく以前に私を苛立たせるものだった。



「いやね、相手側の女社長が奏指名なんだよね。普段は女の誘いなんて受けないんだけど、今度の会社は逃すわけにいかなくてさぁ。奏が断るって聞かないから、説得してもらいたくて…だめ?」




潤目で私を見上げる隼人に、私の眉間に皺が寄った。



「ゆ、ゆいかさんや?顔が鉄より怖いよ?」


「てつ~。」



鉄さんの名前に反応した秋が、私の膝の上で大はしゃぎ。探してるところ悪いけど、鉄さんは今、いないわけで。



「秋?鉄さんはいない、よ?」


「む。」



どうやら納得がいっていない秋はムームー言いながら私の膝から下りた。



どうやら机の上のジュースを飲むためらしい。



頬をふくらましたり、こけさしたり。ストローで一所懸命ジュースを飲んでいる秋を見ていると、イラつきも少し和らいだ。

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