第40話

『私たちは、”虐め”をしていた。』



はっきりと言った女は、どこかすっきりした顔をしていた。


黙り込んだ2人に、ぎこちなく笑って。



『だからさ、ほっといてあげよう?私たちが、今のあの子の幸せを乱す権利なんてない。』



兄貴の腕の中で笑っているゆいかを笑顔で見つめて、女はそう言った。


その手前に居る俺と目が合ったが、女はそのまま踵を返して元来た道へと引き返していく。



『ちょ、待ってって!私らも行くから!』


残った2人が彼女の背中を慌てて追っていくのを見つめて、俺は少し気分が高揚していた。



ゆいかの中学時代は、ろくな奴らがいないとひとくくりにしていたが。


昔の行いを反省し、成長している人間もいる。



(俺も見習わなくちゃな。)



あの女の強い目を思い出して、目が覚める思いだった。



「奏?本屋、行かない?」


「あ?行きてえのか?」



背後で不吉な声が聞こえ、我に返る。



「兄貴!本屋はもういいから!」


「む。いいじゃない。」


「そんなに好きなら…本屋作るか…」


「・・・。」




この相変わらずな2人の方が成長した方がいいんじゃねえか?



そう思わずにはいられない。





……fin

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