第38話

『やだ!噂ってマジなん!?』


『ほんと…まさかマジだったなんてね!』



背後から聞こえた声は、さっきまで俺を不愉快にさせていた奴ら。



『話しかけようよ!チャンスじゃない?』



そう言った1人の声に、俺の眉間に皺が寄る。ゆいかのガキの頃の知り合いはろくな奴がいねえな。



どういう意味の”チャンス”なのかは分からねえが、あまり気持ちのいいものじゃないことは確かだ。



兎に角。さっきとは違い、今は兄貴が一緒にいるわけで。



この女たちが話しかけるだけでも機嫌が悪くなりそうなのに、ゆいかを傷つけた”過去の汚物”だとバレれば、殺すとか言いかねねえ。



釘を指しておこうと振り返った時だった。




『やめようよ。』



常に黙っていた女たちの内の1人がそう呟いた。



『え、なんで?同級生なんだから、旦那さんに紹介してもらえるかもよ?』



やはりな目的の女たち。噂では、ゆいかが兄貴と結婚していたのを知っていたらしい。だけど本人と気付かなかった?



どこまでゆいかを馬鹿にしてるんだ。イラつきに拳を握った俺が眉間に皺を寄せると、涙声が諭すように響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る