第37話

「こんな目立つ所で…何分待ちました?」


「実は…15分前にはいらしていた。」


「・・・。」



昴の質問に答えた鉄とお互い顔を見合わせて、苦笑いが漏れた。



駅前のこんな目立つ場所で待ち合わせをすれば、危険が多いことはゆいかでも分かっているだろう。兄貴が指定した時点で変更は無理だけどな。



恐らく、ただの待ち合わせで動員された組員の数は残念な数になっていることだろう。



ちなみに後日、弘人さんが調べ上げた組員全てにゆいかが礼を言って回ったことで、兄貴の機嫌がしばらく低迷することになるとは、この時の俺は知らない。



「定番な言葉で謝ろうか?『ごめん、お待たせ。』」


「・・・びっくりするくれえ心がこもってないな。」



相変わらずの夫婦漫才をしている2人を前に、苦笑いが隠せない。



しかし、盛り上がる2人と比例して、この場も一層の盛り上がりを見せていた。



『これ見よがしにこんな目立つ場所でいちゃつくなよ。』


一部の若い女たちはゆいかを非難し、



『すげー。めちゃめちゃ美人じゃん。付き合いてー!』


一部の若い男たちは色のこもった目で見つめる。



そしてその他の全ての人間たちが、ゆいかを前にして鼻の下を伸ばしている兄貴をウットリと見つめていた。

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