第31話
「あの時はどうも。」
チラリとゆいかを見て瞳を揺らした昴は、温度の下がった目で女たちを見返した。
あの時とは恐らく、俺たちがゆいかを探していた時期を指しているんだろう。
あの時は必死で。関係ないとは分かっていてもクラスメイトだったという理由だけでも話を聞いて回っていたからだ。
昴の冷たい声音に女たちは少し戸惑った様子だったが、気を取り直したように続ける。
「あ、あの、もしよかったらこれから一緒に来てもらえますか?」
頬を染める女たちは、俺にも同意を求めるように視線を忙しなく動かしていて。
ゆいかには視線をチラリと向けただけで興味はないようだった。
「どうして?」
怒りを抑えているような昴の質問に、気付きもしない女たちは頬を緩める。
「これから同窓会なんです。もしかしたら知ってる人がいるかもですよ?聞いてるかもしれないですけど、まりかは多分来ないんですけど…」
返事が返って来なくて。なんて眉を下げる女たちは、自分の言葉の意味に気付いていないのか?
”まりか”だけに確信を持ったその言葉は、まるでゆいかには通知すら出していないと語っているようで。
昴の顔が苦痛に歪んだ。
そしてなにより、数年経っているとはいえ、ゆいか本人を前にしても気付いていないこの女たちに、嫌悪感が溢れだす。
気持ちの悪さに、肌が粟立った。
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