第29話
数時間後、俺と昴はありえないほど疲れ果てていた。
「お前、結構元気だよな。」
「うん。楽しい。」
ニッコリ笑顔のゆいかに引きつり笑いで応じる。
本屋に2時間、超渋々なゆいかを無理矢理引っ張るような感じで遅めの昼食を食って。
結局舞い戻った本屋。
まだマシだったのは、カフェ内臓型の大型書店だったことだ。
いや、それもあんまよくねえな。コーヒーのせいで腹がタプタプだ。
カフェスペース内であれば試し読みができるその制度のお陰で歩き回らなくても済んだが…
他の客が放っておいてくれるはずもなく、痛い視線を感じながら過ごす俺と昴は深いため息が出る。
しかしゆいかはそんなことは気にならない程本の世界に没頭していて。
付き合っていた頃を思い出した。
あの頃もゆいかは本の世界に入ってしまって。
よく苦笑いで見ていたな。
あの頃の俺たちはそんな穏やかな、平和な世界で生きていて。
今の自分なんて想像もしていなかった。
苦い記憶が蘇りそうになった自分に、自嘲の笑みが漏れた時、
「さて。」
ゆいかが読んでいた本を閉じた。
「行こう!」
弾んだ声に首を傾げて、ゆいかとともに席を立つ。
ふと思いついて携帯を見れば、15時30分前だった。
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