第27話

side 蓮




(お前、後で覚えとけよ。)


(お前も結構理不尽だよな。)



呆れたような目でそんなことを言う昴に、内心舌打ちを吐き捨てた。



兄貴に外せない会議が入ったおかげで、今日はゆいかを独り占めだと思ったのに。


昴のバカが空気を読まずに”出勤”してきた。



内心毒づいてる俺を他所に、ゆいかが珍しく楽しそうに空を見上げていて。


青い空を眩しそうに見ながら漆黒の髪を揺らすゆいかに思わず見惚れた。



柔らかく笑っているゆいかの呟きを聞いて提案してみると、まさかのOKを貰って。



昴が邪魔だがいないものとして扱おうと心に強く誓う。



そして。



「お待たせ。待ち合わせ15時だって。」



そう言いながら出てきたゆいかに、ガラにもなく頬が熱くなる。


心臓は激しく鼓動を刻んで。



髪に合わせたような漆黒のワンピースは、ゆいかの妖艶さを際立たせていた。



そして兄貴との待ち合わせがよほど嬉しいのか、今日は化粧もしっかりしていて。



結婚したせいか、大学生になったせいか、最近増した色気も漂っていた。



目尻が下がり、鼻の下が伸びる、なんていうが。



今の俺はまさしくそうだろう。



恥ずかしさに思わず口を手で覆った。

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